「地域福祉型福祉サービス」推進と社協の取組み提案

1.目指すもの

地域における利用者のその人らしい生活を支えるケアを行う、さらに運営面でも地域社会に根ざした運営を行うというサービス・活動が広がっている。この動きを、福祉サービスを地域福祉という視点から転換するものとして、「地域福祉型福祉サービス」と名づけ、社会福祉協議会として、自らの運営、他との協働により、その促進を図る。

(「地域福祉型福祉サービス」の動き)

  • 近年、宅老所やグループホーム等の動きから、地域における人間関係・社会関係を維持・回復することを重視したケア(利用者と地域社会との関係を断たずに行うケア)が活性化してきた。また、「利用者に寄り添う」というケア姿勢の変化が、とくに痴呆性高齢者の安定した生活に大きく寄与していることも明らかになりつつある。さらに、住民参加型在宅福祉サービス、ふれあい・いきいきサロンなどを含め、地域住民の参加を得た一群のサービスが活性化してきている。

  • こうしたなか本会では、昨年度、これらの活動に係る調査研究を「地域福祉実践の効果的な展開手法及び評価に関する調査研究事業」(委員長:市川一宏ルーテル学院大学学長)として実施し、「地域福祉型福祉サービスの実際と求められるもの」および「地域が支えるその人らしい暮らし~地域福祉型福祉サービス事例集~」としてまとめ、そのなかで「地域福祉型福祉サービス」の提案を新たに行った。

  • 「地域福祉型福祉サービス」の概念は未だ確立されたものではないが、上記のような活動・サービスを総称して、「地域福祉型福祉サービス」と名づけたものである。調査研究では、その対象を高齢者や障害者など、年齢や障害種別により区分するのではなく、地域においてさまざまな生活のしづらさを抱えた住民として捉え、それが持つ共通点・特徴を下図のように地域社会に根ざした運営を行っていること、利用者のその人らしい生活を支えるケアを行っていることと整理し、新しい福祉サービス像として提案したものである。
「地域福祉型福祉サービス」の動き

2.「地域福祉型福祉サービス」の考え方と社協が取り組む意味

 NPOや市区町村社協が取り組む「地域福祉型福祉サービス」は、人間関係づくりや社会関係づくりが難しい利用者のニーズに対し、専門的な対応と同時に友人・隣人という立場でケアをすることの有効性を示している。

 これらの取り組みはニーズをもつ人も地域社会とのつながりを求めていること、担い手も地域社会の一員として支えることに意義を感じていること、さらにそれを地域社会全体で支えるという構図ができつつあることを示すものである。これらはまさしく介護保険事業等在宅福祉サービス部門と地域福祉活動部門との連携や、地域福祉活動を個別支援につなぐという、今日、社協が取り組むべき方向を指し示しているものといえる。

3. 「地域福祉型福祉サービス」推進における具体的な取組み方

(1)市区町村社協の取組み方針(提案)

・「地域福祉型福祉サービス」推進における市区町村社協の取り組みは、

・本人の意志に基づく、その人らしい生活の確保(回復・維持)

・家族、友人、隣人、地域社会との関係(人間関係・社会関係)の確保(回復・維持)

・必要な専門的ケアの利用が可能

という利用者の生活像を目標に、

[1] 既存の福祉サービスを「地域福祉型福祉サービス」に転換する、

[2] 「地域福祉型福祉サービス」を新たにつくる、

[3] 「地域福祉型福祉サービス」を支える環境づくりを地域社会に働きかける、

という3点を考えていく必要がある。

[1]既存の福祉サービスを「地域福祉型福祉サービス」に転換する

既存の福祉サービスを「地域福祉型福祉サービス」に転換するとは、

(ア)地域社会に支持され、地域社会が参加する運営のしくみをつくる。

(イ)当事者の参加する運営、サービスとする。

(ウ)住民・ボランティアが参加する運営、サービスとする。

(エ)地域住民や地域社会のあらゆるニーズや相談を受け止め、(制度の枠組みを超えて)柔軟に対応する。

などが重要である。

単に、決められたサービスを供給すればよいと考えるのではなく、既存のサービスの枠を超えて地域社会の個々のニーズに的確に柔軟に対応するにはどのようにサービス・活動を改善したらよいか検討することが必要である。

具体的には、

(ア)高齢者デイサービスの利用者を高齢者に限定せず、障害者・児、子ども(学童保育)等に広げる

(イ)大規模なデイサービス(定員30名以上)を利用しやすいように、民家を活用して地域に分散させる(定員10名以下)

(ウ)デイサービスに宿泊機能を付設し、緊急なニーズにも柔軟に対応する

(エ)訪問介護サービスに介護保険外のサービスを組み合わせ、生活全体を支える

(オ)ふれあい・いきいきサロンをベースに要介護度が高い利用者への展開を図る

等である。

[2]「地域福祉型福祉サービス」を新たにつくる

「地域福祉型福祉サービス」を新たにつくる場合は、居住機能をもつ小規模多機能施設を新設することが重点となる。

※居住機能を持つことは長期滞在を前提とするのではなく、長期滞在も可能とする機能を持つことを意味する。

この場合、次のように重層的に取り組む必要がある。

(ア)社協自ら取り組む

(イ)市民活動団体、施設法人等が行う取り組みを(とくに地域社会との関係で)支援する

(ウ)市区町村社協あるいは地区社協が、地域住民や当事者組織、ボランティア・市民活動団体、施設法人等と「協働」して取り組む

[3]「地域福祉型福祉サービス」を支える環境づくりを地域社会に働きかける。

「地域福祉型福祉サービス」を新たにつくる場合は、居住機能をもつ小規模多機能施設を新設することが重点となる。

「地域福祉型福祉サービス」の展開を推進し、真に地域社会に支えられるものにするため、地区社協、自治会ほか地域の諸団体、地域社会への働きかけを行う。

(2)全国社会福祉協議会の取組み方針

(社会福祉協議会としての取組みの推進)

  • この「地域福祉型福祉サービス」の取組み方針を提案し、社会福祉協議会としての取組みをすすめる。また、社協活動全国会議等における協議の場の設定等により、共通認識づくり、推進の機運づくりをすすめる。

(全体的な取り組みの推進)

  • 平成15年度の調査研究「地域福祉実践の効果的な展開手法及び評価に関する調査研究事業」の報告書、事例集の普及を通じて、地域福祉型福祉サービスへの理解を広げる。
  • 地域福祉型福祉サービス推進全国セミナー(9月予定、東京近辺)の開催、マニュアル(既存のサービスを「地域福祉型福祉サービス」に転換する方法や、居住機能をもつ小規模多機能施設を新設するための手順や方法、NPOや施設法人に対する支援の方法、地域住民との協働の方法等)作成を通して、地域福祉型福祉サービス推進についての関係者への提案を行う。
  • 上記全国セミナー、マニュアル作成、事例収集のための調査研究委員会を設置する。